不思議な変化球である”魔球”

ジャイロボールが話題になっている。メジャーリーグ、レッドソックスで今シーズンを戦う日本人メジャーリーガー”松坂大輔”投手がジャイロボールを投げるということで、一気に話題になったわけだ。

ジャイロボールというネーミングは日本人にはあまり聞き慣れない名前であり、事実”松坂大輔”投手でブームになるまでは、一度も聞いたことがなかった。
今でこそ、スポーツニュースや新聞でなどのメディアで連日報道されているが、「ジャイロボール」という野球用語キーワードは、ここ数ヶ月の”新参者”であるわけだ。

しかも、ジャイロボールの詳細はほとんど知られていない。そこで「ジャイロボールの握り方や持ち方」、「ジャイロボールの投げ方」を解説していきたいと思う。実際のジャイロボールの動画画像も現在捜しているところだ。動画を見て、ジャイロボールの独特の回転や軌道も分析してみたい。

ジャイロボールという、不思議な変化球である”魔球”をマスターし、みんなを驚かすのもおもしろいと思うぞ。

従来の変化球と大きく異なる点

ジャイロボールとは、投球したボールの進行方向に回転軸が向いていて、高速回転をしながら進んで行くボールである。

ジャイロボールを説明する際、ライフル弾に例えるととても分かりやすい。ライフルから発射された銃弾は、回転していない物に比べて回転を与えて物の方が格段に遠くへ、そして安定して飛ばすことが出来る。アメリカンフットボールの遠投なんかも同じ原理だ。

ジャイロボールの投げ方にはちょっとしたコツがあり、投球の際指に引っかけるように投げるため、右投手が投げたジャイロボールは投手から見て時計回り、左投手が投げたジャイロボールは反時計回りとなる。つまり、”カーブ回転”なわけだ。

ジャイロボールは、従来の変化球と大きく異なる点がある。それは、ジャイロボールの場合、ボールの握りよりもその投げ方に大きなポイントがあるのだ。ジャイロボールの握り方は、一般的なストレートとほとんど同じである。しかし、ジャイロボールの投球フォームは一連の投球動作の他に特殊な手首の動作が加わるのだ。

一般的に「スパイラルリリース(ジャイロリリース)」と呼ばれるその独特のスナップ動作は練習によって習得可能であり、その独特の投球感覚を掴むことで初めて投げることが可能となるわけだ。
練習用具「Xジャイロ」を使用するのが、投球感覚を掴む上ではいいと思う。

「初速と終速の差」が非常に少ない魔球

ジャイロボールには、2つの種類があるといわれている。「フォーシームジャイロボール」と「ツーシームジャイロボール」である。

フォーシームジャイロから説明していこう。フォーシームジャイロボール、別名「対称ジャイロボール」ともいい、一般的なストレート球(フォーシームファストボール)とほぼ同じ握り方で投球されたものである。

対称ジャイロボールは打者側から見た時に、ボールの縫い目が対称面を向けて前進するし、しかも螺旋回転で前進するため、一般的な直球に比べて空気抵抗が少なくなる。よって、ピッチングリリースからキャッチャーが捕球するまでの、「初速と終速の差」が非常に少ない。空気抵抗が少なくなるので当然の結果である。

対称ジャイロボールの初速と終速の差はわずか1%しかない。これは球速に換算すると1〜2km/h程度の微差である。一般的なストレート球がだいたい8〜10km/h位の差なので、その凄さが分かるだろう。

つまり、対称ジャイロボールは、打者の予測よりも早く到達するため、打つタイミングが掴みづらい魔球なのである。

松坂大輔投手には追い風

ジャイロボールのもう一つの種類、ツーシームジャイロを説明しよう。こちらは、別名「非対称ジャイロボール」と呼ばれている。握り方はツーシームファストボールとほぼ同じである。

非対称ジャイロボールは、ボールの縫い目が非対称面を向けて前進する。つまり、打者側から見て”ボール正面の縫い目模様が非対称となる。これにより、一般的なストレート球と同程度の空気抵抗を受け、フォーシームジャイロボールと比べると到達時間が大幅に遅れている印象を受けるわけだ。

つまり、打者としては待てども待てどもボールが来ないので、バッティングタイミングが狂ってしまう。その結果、打者は待ちきれず上体が突っ込み、バットの先で引っ掛け内野ゴロや凡フライとなるケースが多くなるのだ。

プロ野球のピッチャーが投げるボール(初速が150km/h)の場合で、ツーシームジャイロの空気抵抗値はフォーシームジャイロの5倍に達するという。縫い目による空気抵抗の大きさが伺える。とくに、メジャーリーグの公式球は、日本のに比べて縫い目が大きいので、ジャイロボール使いである松坂大輔投手には追い風となるだろう。

今シーズン、ジャイロボールで内野ゴロを量産する松坂大輔投手の勇姿を我々は目にするだろう。

フォークボールに近い変化球

ジャイロボールには、2つの種類があることがお分かり頂けたであろうか。

しかも、ジャイロボールの凄いところはほぼ同じ投球フォームで握り方を変えるだけで、全く異なる球質を投げ分けることが出来る点だ。(ジャイロボールは、正面に来るボールの縫い目のパターンを変えるだけで終速が大きく変わることは前述の通り)

具体的にいうと、「フォーシームジャイロボール」と「ツーシームジャイロボール」では、同じ投手が150km/hで投球したとき、バッター到達に0.02秒、距離にして80cmもの差が出るのだ。ジャイロボールはこの80cmの差を、ただ握りの方向を変えるだけで生じさせてしまうのだ。(ただし、厳密に言うとボールリリースの感覚が多少変わるとのこと。握り方が異なるため、微妙な違い(プロレベルにおいて)が生じるようだ。)

また、ジャイロボールは回転軸の向きと進行方向が同じであるため、一般的なストレート球に生じる”マグヌス力”(浮力を受け、ホップする力)が働かない。そのため、自然に重力に引かれて落下していく。

この点では、ジャイロボールはフォークボールに近い変化球とも言えるだろう。